製造業におけるマニュアル導入の必要性と作成方法、作成のポイント解説
「製造現場での作業品質が安定しない」「教育の手間がかかる」など、製造業の現場ではあらゆる課題が付きものです。こうした課題の解決策として、マニュアル導入が効果的です。マニュアルで作業の標準化を図ることで、従業員全員が同じ基準で作業を進められるようになります。
本記事では、製造業でのマニュアル導入が必要な理由や作成方法、ポイントを解説します。
製造業におけるマニュアル導入の必要性
製造業でマニュアル導入が必要とされている理由は、以下の通りです。
・作業の標準化で品質を安定させるため
・務効率化を図るため
・新人教育の効率化を図るため
・ヒューマンエラーを防止するため
・特定の担当者に依存しない作業体制を作るため
・企業の情報資源にするため
1. 作業の標準化で品質を安定させるため
マニュアルは、作業を標準化し、製品の品質を安定させるために不可欠です。
作業手順が従業員ごとで異なると、製品の品質が一定に保たれなくなり、不良品の発生や原価への影響、さらには顧客の信頼低下にもつながります。
マニュアルを導入することで従業員間の認識のずれがなくなり、全員が同じ基準で作業できるため、品質のばらつきや不良品の発生を抑えられます。
2. 業務効率化を図るため
マニュアルの導入は、業務の効率化に役立ちます。
複数の工程が関わる作業では、各従業員が自身の担当業務や重要な役割を理解し、適切に進めることが不可欠です。マニュアルで業務を可視化することで、従業員は作業手順を確認しながら、何に重点を置くべきかを把握できます。
また、各工程のポイントや注意点を共有すれば、トラブルの再確認や修正にかかる時間も減り、現場全体の業務が効率化されます。
3. 新人教育の効率化を図るため
マニュアルを導入することで、通常業務だけでなく新人教育の効率化も図れます。
新人教育は、教育担当者にとって多くの時間と労力を要する業務です。新人が現場に慣れるまでは、作業手順を細かく教えるだけでなく、注意点や重要なポイントを正しく理解させる必要があります。
マニュアルがあれば、新人は手順や注意点を自主的に学べるため、教育担当者の負担が軽減されます。作業の標準化も図れるため、ばらつきがない一貫性のある教育が可能です。
4. ヒューマンエラーを防止するため
マニュアルの導入は、ヒューマンエラーの防止に役立ちます。製造現場では、手順の見落としや認識違いによるミスが重大な事故や製品不良につながる場合があります。特に複雑な工程や危険を伴う作業では、些細なミスが大きなリスクを引き起こしかねません。
マニュアルを使用することで、作業手順や安全に関する注意事項が明確になり、従業員は必要な手順や安全対策を簡単に確認できます。起こり得るトラブルやエラーが出た際の対処法を明記しておけば、万が一の際にも迅速に対応可能です。
5. 特定の担当者に依存しない作業体制を作るため
特定の担当者に依存しない作業体制の構築も、マニュアル導入の目的の一つです。作業手順やノウハウを特定の従業員だけが知っている状態だと、その人が不在の際に業務が停滞したり、品質が低下したりするリスクがあります。
マニュアルがあれば、担当者が不在のときでも他の従業員が確認しながら作業を進めることが可能です。作業の属人化を防ぎ、どの従業員でも同じレベルの作業ができる体制を整えることで、業務の安定性と生産性を維持しやすくなります。
6. 企業の情報資源にするため
マニュアルは、企業の重要な情報資源としての役割も果たします。作業手順や培ったノウハウをマニュアルにまとめておくことで、従業員の入れ替わりがあっても次の世代に技術を伝承できるためです。
さらに、情報資源が蓄積されることで新たな分野や業務への対応が容易になり、対応業務の拡大につながる可能性もあります。対応業務が広がれば、新規顧客の開拓や新たな市場への進出にも貢献できるでしょう。
【7STEP】製造業向けマニュアル作成の基本手順
製造業向けマニュアル作成の基本手順は、以下の7STEPです。
・STEP1:マニュアル導入の目的を設定する
・STEP2:マニュアル導入までのスケジュールを立てる
・STEP3:マニュアルに記載する作業内容をリストアップする
・STEP4:必要な写真・画像を集める
・STEP5:マニュアルの構成を設計する
・STEP6:マニュアルを完成形まで仕上げる
・STEP7:完成したマニュアルを印刷・電子化する
STEP1:マニュアル導入の目的を設定する
まずは、マニュアル導入の目的を設定しましょう。目的が明確にならないまま準備を進めても、必要な内容や方向性が定まらず、導入の効果が出ない可能性があります。
目的の例は「作業効率化を図り、作業時間を〇時間短縮する」「特定の人材に頼らない作業体制を整える」などです。目的に沿ってマニュアルを作成すれば、記載すべき項目が明確になり、完成形のイメージも具体化されます。
STEP2:マニュアル導入までのスケジュールを立てる
目的を設定したら、マニュアル導入までのスケジュールを立てましょう。
導入までには、従業員へのヒアリングや情報収集、作業工程の撮影、マニュアル内容の修正など、多くの準備が必要です。スケジュールを立てることで各工程の進捗を管理しやすくなり、導入の遅れや見落としを防げます。担当者も併せて決めておくと、準備がよりスムーズに進むでしょう。
STEP3:マニュアルに記載する作業内容をリストアップする
次に、マニュアルに記載する作業内容をリストアップしましょう。リストアップしないまま情報収集に入ると、要点がまとまらず分かりにくいマニュアルになる場合があるためです。
マニュアルに含める作業内容には、作業手順や注意点、使用機材の操作方法など、多岐にわたります。必要な情報を漏れなく記載できるよう、まずは全ての作業内容をリストアップして整理しましょう。現場担当者にヒアリングしながらリストアップすると、より実用性が高いマニュアルとなります。
STEP4:必要な写真・画像を集める
続いて、マニュアル作成に必要な写真・画像を集めましょう。視覚的な情報があると、文章だけでは伝わりにくい作業手順や注意点が一目で理解でき、現場での実用性が高まります。
撮影時には、重要な部分がしっかり見えるアングルを意識し、要点が伝わりやすい構図で撮影します。集めた写真や画像は作業工程ごとにフォルダに分けて集約し、スムーズに選定できるようにしましょう。必要に応じて明るさ調整やサイズ調整もしておくと、さらに視認性が上がります。
STEP5:マニュアルの構成を設計する
写真撮影が完了したら、マニュアルの構成を設計します。構成を固めることで、分かりやすく読みやすいマニュアルが完成します。リストアップした内容と集めた素材を基に、大まかな見出しを決めましょう。
構成は「表紙」「目次」「概要」「本文」「索引」の流れで作ると、必要な情報を順に把握しやすくなります。本文は、作業前の準備から始めて作業手順、作業後の確認へと進むと、手順が整理されて理解しやすいです。
STEP6:マニュアルを完成形まで仕上げる
ここまで準備が整ったら、マニュアルを完成形まで仕上げましょう。撮影した写真・画像を本文に入れ込み、読み手が理解しやすいようにレイアウトや文章の表現を整えます。誤字脱字や情報の漏れがないかも確認しましょう。
作成する際は、専用のマニュアル作成ツールやテンプレート機能があるOfficeソフトを活用するのがおすすめです。例えばマニュアル作成ツールなら、システムに作業内容を入力するだけで簡単にレイアウトが整い、必要な情報を即時にマニュアル化できます。
STEP7:完成したマニュアルを印刷・電子化する
マニュアルが完成したら、印刷もしくは電子化しましょう。
スマートフォンやパソコンなどの端末を頻繁に使用しない、マニュアルの数が少ない現場は印刷が適しています。端末が利用できる現場や、内容の変更を頻繁に行いたい現場、マニュアルの数が多い現場では、電子化するのがおすすめです。
電子マニュアルなら、クラウドや社内ネットワークを通じて常に最新の内容を共有でき、改訂作業もスムーズに行えます。
製造業のマニュアル作成をスムーズに進めるためのポイント
製造業のマニュアル作成をスムーズに進めるためのポイントは、以下の5つです。
・誰が見ても分かるマニュアルを作成する
・複雑なデザインは避け、見やすさを重視する
・注意書きは強調する
・内容は継続的にアップデートする
・テンプレート・マニュアル作成ツールを使う
1. 誰が見ても分かるマニュアルを作成する
従業員が情報を理解しやすいよう、誰が見ても分かるマニュアルを作成しましょう。
マニュアルは、新人からベテランまで幅広い従業員が使用します。専門用語や難しい表現は避け、できるだけ簡潔な文章で説明しましょう。新人向けのマニュアルの場合は、業務を進める上で知っておくべき用語や機械の説明も記載しておくと良いです。
また、図や写真を取り入れることで説明と実際の作業が一致し、従業員が迷わずに作業を進めやすくなります。
2. 複雑なデザインは避け、見やすさを重視する
マニュアルのデザインやレイアウトは見やすさを重視し、複雑なデザインは避けましょう。過度な装飾やカラフルな配色は情報を見づらくする原因になるため、フォントや配色はシンプルに整えることがポイントです。
また余白を設けたり、写真や画像を整列させたりすることで、読み手が情報を理解しやすくなります。情報が多過ぎても見づらくなるため、必要なポイントを絞って記載しましょう。
3. 注意書きは強調する
マニュアルには、従業員が安全に作業を行うために必ず守るべき注意点が含まれます。これらの注意書きは、読み手が一目で認識できるよう「注意」「警告」などの文字を入れて強調しましょう。
特に危険を伴う作業で情報を見落とすと、重大な事故につながる恐れもあります。重要な箇所を視覚的に目立たせ、従業員が安全に作業できるようにしましょう。
4. 内容は継続的にアップデートする
マニュアルは一度作成したら終わりではなく、現場の変化や仕様の変更に合わせてアップデートする必要があります。アップデートのタイミングとしては、業務内容や法令の変更があった際に行う随時改訂、年もしくは半年ごとに行う定期改訂の2つです。最新情報に基づいて業務を遂行できるよう、継続的に内容を更新しましょう。
また、最初に設定した目的に対する到達度を測るのも重要です。期待していた効果が出ていないのであれば、どこが問題なのかを探り、改善策を立てましょう。
5. テンプレート・マニュアル作成ツールを使う
マニュアル作成の効率を上げるためにも、テンプレートや専用のマニュアル作成ツールを活用することをおすすめします。
テンプレートは、WordやExcelなどのOfficeソフト、Googleドキュメントなどで無料で提供されています。既存のテンプレートなら、内容を指定箇所に入力するだけで作成可能です。ただし、業務内容によってはデザインやレイアウトの調整に時間がかかる可能性があるため注意が必要です。
マニュアル作成ツールは、必要な情報をシステムに組み込むだけで自動的にレイアウトが整い、分かりやすいマニュアルを効率的に作成できます。スマートフォンやパソコンからも閲覧しやすいため、実用性が高まります。更新や改訂も簡単に行えるため、常に最新の情報を維持しやすい点がメリットです。
株式会社成電社でも、システムに指示するだけで簡単に組立作業手順をスライドショー化できるツール「ビジュアル先生PRO」を提供しています。手間と労力がかかるマニュアル作成を効率的に進めるためのツールの一つとして、ぜひ導入をご検討ください。
【まとめ】製造業のマニュアルは、業務効率化と品質維持の要となる
製造業にマニュアルを導入することで、作業手順が標準化され、品質の維持や業務効率の向上が期待できます。また新人教育の効率化やヒューマンエラーの軽減、特定の担当者に依存しない業務体制の構築も可能です。効率良く作成するためにも、既存テンプレートやマニュアル作成ツールを活用することをおすすめします。
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無料体験版も実施しているので、マニュアル作成をご検討されている製造業の担当者さまは、ぜひご相談ください。