生産ラインを自動化するには? メリットや直面する課題、成功させるポイントを解説
少子高齢化による労働力不足やニーズの変化から、製造業における手作業での生産体制は限界を迎えつつあります。そこで重要となるのが、生産ラインの自動化です。自動化を導入すれば、人材不足問題の解消や高品質な製品の安定的な生産が期待できます。
本記事では、生産ラインを自動化するために必要な基礎知識やメリット、課題、成功に導くポイントを解説します。
生産ラインの自動化が求められている背景
生産ラインの自動化が必要とされる背景には、少子高齢化による人手不足や、製品に対する多様なニーズの増加があります。少子高齢化が進む中、これまでのように手作業に頼った生産では、生産性や品質を維持するのが難しくなりました。
厚生労働省の「2024年版ものづくり白書」によると、2002年から2024年にかけて、製造業における高齢者の割合は増加する一方です(※)。このような労働力不足の状況を打破するには、生産ラインの自動化によって限られた人材で最大限の成果を上げる仕組みを構築する必要があります。
また製品に対するニーズの多様化も、自動化が求められる背景の一つです。以前は大量生産の時代でしたが、現在は幅広い製品を少量ずつ生産する時代になりました。消費者の多様化するニーズに対応するためには、柔軟性と効率性を兼ね備えた生産体制を作る必要があります。生産ラインを自動化することで、短い時間で効率良く製品を作れます。
※参考:厚生労働省.「2024年版ものづくり白書概要」p6.
https://www.mhlw.go.jp/content/001258804.pdf ,(参照2024-11-18).
生産ラインの自動化には3段階ある
「生産ラインの自動化」と聞くと、全ての作業をロボットでの作業に置き換えるイメージを持つかもしれませんが、必ずしもそうなるとは限りません。生産効率を上げるには、必要な部分に自動化を導入することが鍵です。
以下で、生産ラインの自動化の3段階を見ていきましょう。
・1段階目:部分的に自動化している状態
・2段階目:自動化がほぼ完了している状態
・3段階目:完全自動化している状態
1段階目:部分的に自動化している状態
1段階目は、部分的に自動化されている状態です。生産ライン全体ではなく、特定の工程や作業に自動化技術を導入している状態になります。
例えば、組立や検品などの単純作業をロボットや機械が担い、溶接や部品加工など複雑な作業や監視は人が行う形です。
2段階目:自動化がほぼ完了している状態
2段階目は、生産ラインの大部分が自動化されている状態です。組立や検品などの単純作業だけでなく、これまで人が担っていた複雑な工程や繊細な作業にもロボットや機械が導入されています。一方で、材料の調達や出荷前の梱包といった工程は、間違いがないよう人の手による確認が行われます。
3段階目:完全自動化している状態
3段階目は、生産ラインが全て自動化され、人の手をほとんど必要としない状態です。材料の供給から製品の組立から検品、出荷まで、全ての工程が機械やロボットで実施されます。
例えば、部品の発注はシステム側で必要な量を計算し、自動で手配する仕組みです。結果として在庫過多や不足といった問題を回避でき、効率的な生産が可能となります。
生産ラインの自動化によって得られるメリット
生産ラインの自動化によって得られるメリットは、以下の4点です。
・生産ラインの品質安定化が期待できる
・人手不足による問題を解消できる
・生産性が高い作業体制を構築できる
・労働環境の安全を確保できる
生産ラインの品質安定化が期待できる
自動化された生産ラインでは、機械やロボットが精密な作業を一貫して行うため、作業ミスが減少し、製品の品質が安定します。
例えば、出荷直前の検品作業を人の手で行う場合、どうしても感覚に頼る部分が出てしまい、見落としが発生する可能性があります。また作業員によって確認の基準が異なると、製品の仕上がりに差が生じるリスクもあるのです。
検品作業などの人の判断力に頼っている工程をシステムで自動化すれば、正しいデータに基づいた精密な検査が可能となります。検査の質が上がったことで品質を均一化でき、よりクオリティの高い製品を納品できます。
人手不足による問題を解消できる
人手不足の問題も、生産ラインの自動化で解消できる場合があります。
冒頭でも触れたように、製造業では少子高齢化や労働環境の変化により人材の確保が困難な状態です。人手が足りていない作業にロボットを導入することで、労働力の補完が可能になります。
人が足りていないと従業員の残業時間が増え、一人ひとりの作業の負担や人件費が高騰します。従業員のモチベーション低下にもつながるため、自動化で人手不足を解消するのは、企業が生き残る上で重要な取り組みです。
生産性が高い作業体制を構築できる
生産ラインを自動化すれば、生産性の高い作業体制を構築できます。
ロボットなら24時間休みなく働けるため、従業員の欠勤や退職による生産性の低下を軽減することが可能です。さらに、夜間の稼働でも一定の効率を保てるため、工場全体の稼働率が向上し、安定した生産体制を維持できます。
労働環境の安全を確保できる
労働環境の安全を確保できるのも、生産ラインを自動化するメリットの一つです。高温な環境での作業や化学物質を扱う工程、重量物の持ち運びなど、人に負担がかかる作業を機械に任せることで、事故のリスクを大幅に軽減できます。
負担が少なくなったことで、従業員は他の重要な作業にリソースを割けるようになり、企業の成長にもつながります。
生産ラインの自動化で直面する課題
作業工程を自動化することで、品質の安定化や人手不足問題の解消などのメリットが見込めますが、一方で以下の課題も考慮しなければなりません。
・導入コストがかかる
・自動化できない作業もある
・機械に精通した人材の確保が必要となる
導入コストがかかる
生産ラインを自動化するには、機械やロボットの購入、作業体制の構築、従業員の教育など、多額のコストが必要です。産業用ロボット一台の導入でも数百万円以上かかる場合があり、さらにメンテナンス費用やシステムのアップグレード費用も発生します。
こうした課題を乗り越えるためにも、導入してからどのくらいで初期コストを回収できるのかを考え、慎重に導入しましょう。中小企業や小規模事業者であれば、ものづくり補助金を活用するのも良い方法です(※)。
※参考:ものづくり補助事業公式ホームページ.「ものづくり補助金総合サイト」.
https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html ,(参照2024-11-17).
自動化できない作業もある
作業工程の中には、自動化できない作業もあります。例えば、職人の熟練した技術が必要な生産ラインの場合は、産業用ロボットの力では難しい可能性があります。また、細かく複雑な部品に異常がないか確認する工程では、人の繊細な判断が求められる場面も少なくありません。
機械に精通した人材の確保が必要となる
導入する機械やロボットによっては、メンテナンスやトラブル対応に専門的な知識が求められる場合があります。例えば、ロボットの動きを調整する複雑な作業や設定、エラー対応などを迅速に行うには、機械に精通した人材が不可欠です。
外部の専門業者に対応を依頼する選択肢もありますが、コストや対応スピードの面で課題が生じる可能性があります。そのため、社内で専門技術を持つ人材を育成することが、長期的な運用の安定性につながります。
生産ラインの自動化を成功させるためのポイント
生産ラインの自動化を成功させるためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。
・段階的に自動化する
・費用対効果を感じられるロボット・システムを導入する
・運用に必要な人材育成を行う
段階的に自動化する
一度に全ての作業を自動化するのはコストや技術面での負担が大きいため、段階的に進めるのが現実的です。まずは、生産効率が低い部分や単純作業から自動化し、導入を進めていきましょう。
例えば、組立作業を産業用ロボットに実施させることで、作業効率を向上できます。作業効率が見込めると判断したら、搬送や検品などの工程にも自動化を広げると良いでしょう。
費用対効果を感じられるロボット・システムを導入する
自動化のために産業用ロボットやその他のシステムを導入する際には、費用対効果を重視して製品を選びましょう。コストが高い設備は導入コストも大きくなるため、どのくらいの期間で効果が出るのかを見極める必要があります。導入目的を明確にした上で、必要な機能がそろったロボット・設備を選びましょう。
株式会社成電社でも、生産ラインの自動化に役立つ産業用ロボットを扱っています。運搬から溶接や塗装、組立まで可能な垂直多関節ロボットや、水平の動きに適した水平多関節ロボットなど多様な用途に対応可能です。製造現場での課題を解決し、費用対効果の大きな自動化に貢献しています。
運用に必要な人材育成を行う
生産ラインの自動化を成功させるには、運用に必要な人材の育成が欠かせません。導入する機械やシステムを正しく操作し、トラブルが発生した際に迅速に対応できるスキルが求められます。人材育成にはコストはかかりますが、長期的かつ安定した業務体制を構築するためにも力を入れましょう。
参考までに、厚生労働省ではものづくり産業における人材育成として、生産性向上人材育成支援センターのプログラムを推奨しています(※1)。また一定の条件を満たせば、国から人材開発支援助成金を受給できる場合があります(※2)。こうした公的な制度を積極的に活用することで、効率的かつ効果的な人材育成が可能になります。
※1参考:厚生労働省.「2024年版ものづくり白書概要」.
https://www.mhlw.go.jp/content/001258804.pdf ,(参照2024-11-17).
※1参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED).
https://www.jeed.go.jp/js/jigyonushi/seisansei.html ,(参照2024-11-17).
※2参考:厚生労働省.「人材開発支援助成金」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html ,(参照2024-11-17).
【まとめ】生産ライン自動化を進めるなら、産業ロボットを検討しましょう
生産ラインの自動化は、企業の生産性向上や人手不足の解消に大きなメリットをもたらします。
自動化には導入コストや運用を支える人材育成が必要となりますが、長期的な視点で見れば大きな効果が期待できます。特に産業用ロボットは、人手不足による業務体制の低下を補う有力な手段です。部分的な自動化から始め、段階的に導入を進めていきましょう。
株式会社成電社では、限られたリソースで高い生産性を生み出す産業用ロボットを取り扱っています。貴社の生産ラインの自動化をサポートし、効率的で持続可能な生産体制の構築をお手伝いします。安川電機、三菱電機、FANUCなどの主要メーカーも取り扱っているので、ロボットの導入を検討されている企業担当者さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。